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実用新案権

実用新案権は、特許権と同じく知的財産権の一種ですが、特許よりも簡易な発明や技術的改善に対して与えられる権利です。特に、物品の形状や構造に関する考案を保護することを目的としており、特許に比べて早く、手軽に権利を取得できる点が特徴です。中小企業や個人発明家にとって使いやすい制度となっています。

1. 実用新案権の概要

1.1 実用新案とは

実用新案は、特許が保護する「高度な発明」よりも、小規模な技術的改善やアイデアに対して与えられる権利です。特に、物品の形状、構造、組み合わせに関する新しい考案が対象となります。これにより、改良された日用品や機械部品など、実際に製品化されやすい技術が保護されます。

  • 対象物:物品の形状や構造、またはそれらの組み合わせ。
  • 対象外:物の製造方法や操作方法、ソフトウェアそのものなどは対象外です。ただし、ソフトウェアに組み込まれた装置の物理的な構造などは対象になることがあります。

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例えば、既存のハサミに新たな機能を加えたもの、日用品のデザイン改善、機械の部品に関する小さな改良などが実用新案の対象となり得ます。


2. 実用新案権の取得と要件

2.1 新規性

実用新案権を取得するためには、その考案が新しいものであることが必要です。つまり、出願前に公知の技術や製品ではないことが求められます。もし、すでに公に知られている技術であれば、実用新案として保護されません。

2.2 簡素化された登録手続き

実用新案権は、特許権と違って、無審査登録制度を採用しています。これは、出願された考案に対して審査を行わず、形式的な要件を満たしていればすぐに権利が付与される制度です。そのため、特許と比べて迅速に権利を取得することができます。

2.3 保護対象が物品の形状や構造に限定される

実用新案の保護対象は、あくまで物品の形状や構造に限定され、製造方法や化学物質、ソフトウェアなどは対象外となります。この点で、より簡単な技術的アイデアが中心となります。

2.4 技術評価書の取得

無審査で登録されるため、権利行使を行う前に「技術評価書」を取得する必要があります。技術評価書は、特許庁がその考案が技術的にどの程度の価値を持つかを評価したもので、これにより考案の有効性を判断します。技術評価書が必要な理由は、無審査で登録された実用新案が無効となるリスクがあるからです。


3. 実用新案権の保護期間

実用新案権の保護期間は、出願から10年間です。特許権の保護期間(20年間)に比べて短いですが、短期間で取得可能な点から迅速に市場に出せる製品などに適しています。

  • 10年間の保護期間中、権利者はその考案を独占的に使用し、他者が無断で製造、販売、使用することを防ぐことができます。

4. 実用新案権の内容

4.1 権利の内容

実用新案権は、考案者にその考案を他者が無断で利用することを禁止する独占的権利を与えます。権利者は、他者がその考案を使用して製品を作ったり、販売したりすることを防ぐことができます。また、侵害行為が発生した場合には、差し止めや損害賠償を請求することも可能です。

  • 排他的権利:他者が実用新案を無断で使用することを禁止し、権利者のみがその考案を利用できます。

4.2 技術評価書の重要性

無審査で登録されるため、権利を行使する際には技術評価書の提出が必要です。この技術評価書を持って初めて、裁判所に対して差し止めや損害賠償の請求ができるようになります。評価が低い場合は、無効の可能性もあり、実際の権利行使が難しくなることもあります。


5. 実用新案権の取得のメリットとデメリット

5.1 メリット

  1. 迅速な権利取得:特許のような審査を受けずに登録できるため、発明者は迅速に権利を得ることができます。
  2. 低コスト:特許に比べて出願費用や手続きが簡単であるため、コストが低い点がメリットです。特に中小企業や個人発明家にとっては使いやすい制度です。
  3. 小さな改良を保護:高度な発明でなくても、既存製品の改良やデザインの工夫であれば、実用新案として保護される可能性があります。

5.2 デメリット

  1. 保護範囲が限られる:物品の形状や構造に関する考案しか保護されないため、方法やプロセス、ソフトウェア自体は保護されません。
  2. 技術評価書が必要:実用新案権の行使には技術評価書の取得が必要で、評価書の内容によっては権利の行使が制限される可能性があります。
  3. 保護期間が短い:保護期間は10年間と特許より短いため、長期的な権利保護が必要な場合には特許の方が適しています。

6. 特許との違い

項目実用新案権特許権
対象物品の形状や構造、組み合わせに関する考案技術的な発明(製品、方法、技術全般)
審査無審査で登録審査あり(新規性、進歩性の審査)
保護期間出願から10年間特許権付与から20年間
費用低コスト、簡便な手続き高コスト、複雑な手続き
技術評価権利行使には技術評価書が必要審査を通じて有効性が確認済み
対象外方法やプロセス、ソフトウェアすべての技術的発明が対象

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